金沢の稀少伝統工芸である加賀象嵌のお話を中心に、その他趣味のお話もちょろちょろと…。


by pa-pen
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一人でやるということ

春の嵐でしょうか。大荒れのお天気の金沢です。
それでも風が暖かくなって参りましたね。今年もぼちぼちプランター菜園の苗植えの季節だな…と何を植えるか検討しております。

最近展示会に出ていると、学生さんと思しき方から「作家として食べていきたい」というご相談をいただくことがちょこちょこあります。
私が思うに、一般の方が考えている「作家」という仕事の形態がとれている(好きな作品を作ることだけに没頭して日々を過ごす)方は、作家をしている人間のほんの一握りです。


これから作家の道を進みたい!という方、作家とはどんな生活なのか気になる方に、その実態を少しご紹介します。


「作家」と呼ばれる人の大半が副業をしています。
先輩作家さんの下請けだったり、パートやバイトだったり、学校の先生だったり、普通に就職をしていたり…業種は様々ですが、自分の作品だけを制作販売して、それだけで食べている人間はとても少ないです。


私は高校生の時に加賀象嵌の道に進むことを決め、実際に学ぶようになって17年になりますが、自分の作品だけで食べていけるようになったのは14年目からです。
それまでは夜は飲食店でバイトをしたり、下請けの仕事をして生活していました。

ちなみに、この下請けの仕事をメインにされている方を工芸の世界では「職人さん」と呼ぶことが多いです。
一般的な「職人さん」のイメージと、工芸をしている人間の「職人さん」に対する感覚は少し違います。
なので「日本の職人展」などの催事に呼んで頂く際は、実は少し違和感を感じていたりします(苦笑)。


話が脱線しました。
自分の作品だけで食べていけるようにはなりましたが、前述の通り、作品を制作することだけに没頭して生活できる方は本当に一握りです。

私は自分の作品をどんな方が求められるのか、自身の目で確かめたいという思いもあり、委託販売はほぼせず自分自身で売り歩くという形を現在は選んでおります。

今ではありがたい事に色々なギャラリーや百貨店からお声がけいただき、あちこち行かせていただいておりますが、最初は自分で作品のポートフォリオを持って営業に出歩いておりました(笑)。
今でも名刺は常に持ち歩いておりますし、飲み屋であろうとどこであろうと、出会った方には名刺を渡して営業しております(笑)。

そういった人と人のご縁で仕事が入って参りますので、家に籠って作品だけ作る…というようなわけにはなかなか行きません。


ご縁があり、百貨店でお仕事が入ったとしましょう。
まず、大量の書類との戦いがあります(苦笑)。

きっと事務仕事や書類仕事なんてしたくない!という思いから、好きなモノづくりの道に進もうと考えている方もいらっしゃると思いますが、残念ながらそうはいきません。

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百貨店であろうと、ギャラリーであろうと、必ず書類はついてきます。
しかも枚数が多い!!!
毎度毎度ウンザリします(苦笑)。

県外の百貨店やギャラリーでの仕事だった場合、宿泊費や交通費は負担してもらえて、ホテルも用意してもらえている…なんて考えていませんか??
宿泊費も交通費も自分持ちですし、もちろん宿の手配も自分でしなければなりません。
暇さえあればパソコンとにらめっこして、安いチケットや交通手段をひたすら調べます(笑)。

作品を作れば、箱に入れなくてはいけません。

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もちろん箱詰め作業だって自分でやらなくてはいけません。

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説明書や作歴も自分で作って、自分で折って自分で箱詰めです。

値札も自分で用意しなければいけません。箱もタダではありませんし、作品に合う色や形態の物を探して購入しなくてはいけません。
これがなかなか大変だったりします(汗)。
こういった地味な作業も省くことはできない大切な仕事の一部です。

一人でやるということは、経理も一人でやらなくてはいけないということです。
毎年の確定申告ももちろん自分でやります。
そしてその為には領収書整理が欠かせません。

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出張から帰った時は、大量に溜まった領収書&帳簿と3時間近く格闘します(苦笑)。

物を作る仕事をしているというと、なんだか好きなことだけをやって気ままに暮らしているように思われる方も多いようですが、実際の業務内容は雑務が多く、限られた時間の中でいかに計画を立てて制作の時間を組み立てていくかというのが大切になります。

いつも必ず一ヶ月分の計画表を作るのですが、仕事は突然入ってくる為なかなか予定通りとはいきません。
常に新しい作品を作っている為、もちろん失敗だってあります。

材料はタダではありませんから、そもそも材料を買うお金がなければどうにもなりませんし、道具は消耗品も多く、そういった経費もバカになりません。
今私の工房にある制作の為の道具の総額はざっと軽く見積もっても200〜300万ほど。
仕事に最低限必要な道具を揃える初期投資だけでも20万はかかります。
(逆にいうと20万あればある程度揃えられます。)


「普通のサラリーマンにはなりたくないので、何か作る仕事を…」
と相談されることがありますが、普通のサラリーマン以上に事務仕事や営業をしなくてはいけない場合だってあります(苦笑)。

この仕事のベースはとにかく「好き」ということだけです。
私は加賀象嵌がとても好きで、それ以外で生活していく術が浮かばないので、なんとか嫌なことも頑張れております。
これはとてもラッキーな事です。

随分と夢のない話をしてしまいましたが…
これからモノづくりの道に進もうという方は、こういう世界もあるのだということを理解した上で頑張って欲しいなぁと思います。

もちろん、才能や縁に恵まれて、作品づくりだけに没頭できる方だっていらっしゃいます!
夢は大きく!!!!
でも現実も大切に(笑)。



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by pa-pen | 2018-04-15 15:15 | 雑記 | Comments(0)