作品の価値

先日書いた「一人でやるということ」という、作家として生きるという事の実情をご紹介した記事が、思いの外多くの方にご覧いただく形となり驚いております。

今回は、その記事を踏まえた上で、ちょっと踏み込んで価格のお話をしたいと思います。
前述の内容をご覧になっていない方は、そちらを一度ご覧になって頂いた方がわかりやすくなるかと思いますので是非ご一読ください。
価格という現実的なお話を踏み込んでお伝えしていいものか悩んだのですが、知っていただく事も大切な事のような気がしましたので、記載することに致しました。

工芸品や芸術品の価格ってよくわかりませんよね。
私も正直よくわかりません(苦笑)。

ただ、長年自分自身で作品を制作販売し続けていく中でわかってきた事もあります。
その一つが

販売価格=作品そのものの価値

ではないという事です。

物を売る仕事に従事していない限り、実はこれっていまいちピンとこない話なのではないかと思います。
私自身もそうでした。
ちょっと語弊のある表現のような気もするのですが、これ以外うまい言い方が思い浮かびませんでした(汗)。
後述の内容をお読み頂き、なんとなく言いたいことを汲んでいただけると嬉しいです(苦笑)。


世の中の人の多くが、工芸品や芸術品の販売価格を見て、その全てが作家の手元に入っていると思われています。
私の作品は決して安価ではない為、上記のように考えた方から

「こんな高額なものを売って、さぞかし儲けているのだろう」

と言われることが多々あります。


ですが、現実は実利でいうと販売価格の1〜2割、いいとこ3割といったところです。


まず、百貨店やギャラリーなど店舗で販売する場合は、必ず仲介料が取られます。
大体が販売価格の2〜4割、有名ギャラリーなどは5〜6割仲介料をとります。

話だけ聞くと「仲介料でそんなに取るなんて!!!」と思われるかもしれませんが、仲介料をとる代わりに、自分だけでは集客できないような層のお客様を集客し、紹介してくださるので、額としては決して高い価格だとは私は思いません。

スーパーで売られているものに関しては、皆さん卸値があることをご存知なのにも関わらず、こと美術品や工芸品となると、そういう発想がなくなってしまう方が多いのが不思議なところです(苦笑)。

残った価格の中から、材料費や制作に必要な光熱費、送料などを引いていくと、時給に換算するのが嫌になるくらいの金額しか残りません(苦笑)。

こういうお話をすると「では百貨店やギャラリーからは買わずに作家個人から直接安く買おう」と思われるかもしれませんが
私の場合は私個人から購入しても、店舗を通じて購入しても金額は変えないことにしています。
これは上記のようなことをしてしまうと、販売店舗との信頼関係がなくなってしまうからです。


「じゃあ個人で販売している時はボロ儲けじゃないか!」という方もいらっしゃるかもしれません。
正直なところ、前述の通り、店舗を通じての販売実利はわずかなものです。
店舗を通じて知り合った方が、後々自身の顧客になってくださることで、ようやく作家として食べていける程度の稼ぎになるのです。


他の作家の方がどのような考えかはわかりませんが、私個人で言えば、百貨店やギャラリーでの仕事はいわば宣伝のようなものです。
百貨店やギャラリーで宣伝させて頂くことでだんだんと顧客が増え、そうなることで今度はこちらが百貨店やギャラリーの集客をあげる広告塔に育っていく…。
これが一つの理想の形なのではないかと考えています。


この仕事を始めた頃は、物の価格というものの意味が分かっていなかった事もあり、現在よりもかなり安い価格をつけていました。
販売価格の中には、材料費など作品に直接かかる金額はもちろんのこと、それを販売するに当たり関わる人間への人件費、そして自分自身の作品に対する自信や責任(これがブランド価値と呼ばれるものなのかもしれません)が含まれているのだということを最近ようやく理解するようになりました。

作品に対する自信や責任に関するお話はまた機会があれば掘り下げたいと思いますが、長くなりそうですので今回は割愛いたします。

ここまで読んでいただければ「販売価格=作品そのものの価値」ではないと書かせていただいた意味が分かっていただけるかと思います。
「そういったことを全てひっくるめて作品の価値」でもありますので、少し語弊があるかも…と悩みました。

あくまでこれは私が活動してきた中で感じたものであり、作家それぞれ価格に対する考え方は様々だと思います。
ただ、若手作家の方であまりにも安い金額をつけられている方には、もう少し価格の意味を考えて欲しいと思うことがあります。

買い手としてはもちろん安いに越したことはないんですけどね(笑)。

ここに記載された内容が全てで正しい!とは思わないでください。
あくまで一例です。
一例ではありますが、美術品や工芸品がなぜに高額なのか、その理由の一部をご理解いただければと思い書かせていただきました。
一般の方に対して…というよりは、10代20代の作家さんに対しての想いが強いかもしれません。
なかなかこういった具体的な価格の話をする機会は少ないですから、私自身理解するのにとても時間がかかりました。

買い手にとって安いことは良いことですが、作品の価格には色々なものが含まれているということを若手作家さんには知ってもらいたいです。

…なんて、少し偉そうでしたね。すみません(汗)。

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工房長みつ君も「難しい話はよく分からん」と寝てしまいました(笑)。

ただ、一人でやっていく場合は、やはりこうした市場の流れや価格の意味ともしっかり向き合わないといけないんですよね。
毎回価格付けは悩みます。



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by pa-pen | 2018-04-19 14:50 | 雑記 | Comments(0)

金沢の稀少伝統工芸である加賀象嵌のお話を中心に、その他趣味のお話もちょろちょろと…。


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