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随想録その8「師匠に頂いた助言について」

昨日の夜は窓を開けてもなんとなく寝苦しく、扇風機を稼働しました。
金沢は全国から見ればまだ涼しい方のようなので、もっと暑い地域の方もいらっしゃるんでしょうね。
今の時期、油断して熱中症になりやすいそうですので、皆さん呉々もお気を付けくださいませ。

随想録その8は師匠である中川衛先生生に言っていただき、今でも為になっている言葉についてです。

もちろんどんな助言も非常にありがたく受け止めておりますが、今現在の私の基本になっている言葉が二つあります。


まず一つが「一呼吸おいて『そうですね』と言いなさい。」です。

10代〜20代前半の頃はとにかく気が強く、人に何か言われて一番最初に来る私の言葉は
「いや…」「でも…」
の二つでした。

大学の講評会で先生方にご意見を頂いても、私の口から出る最初の言葉は否定の言葉ばかり。
非常に空気が悪くなっておりました(苦笑)。

そんな時、中川先生に言われたのが先ほどのお言葉です。

それから意識的に否定したい気持ちをグッと堪えて「そうですね。」から会話をするようにしたところ、周りの反応もさることながら、自分自身の気持ちに大きな変化がありました。
自分を守るために否定の言葉から入っていた会話でしたが、肯定の言葉から始めることで、ガチガチだった心がふっとほぐれるような感覚になりました。
素直に入ってこなかった人の言葉も、すっと心に響くようになりました。

たった一言始まりの言葉を変えるだけで、こんなにも変わるのかと驚いてしまいました。

今でも会話の時は否定言葉ではなく、できるだけ肯定言葉から入れるように意識しています。

とは言いつつ、元来の気の強さがなくなるわけではありませんので、いまだにポロリと出てしまうことはありますが…(苦笑)。



二つ目は「最後は人を見る。」です。

大学時代、講評会は直前まで制作をして徹夜明けでボロボロの格好で出席する人が多かったのですが、中川先生はそれを良しとはしませんでした。
制作する机が汚れることにも厳しく注意されました。

「同じように良いものがあった時、最後どちらを取るか決める時に見るのは作者の人となりだ。
見栄えはいい方が良いに決まっているし、作業場が綺麗な方が信用できる。
つまらないところでチャンスを逃さないよう、できる努力をしなさい。」

今でもこの言葉を胸に、見た目だけではなく、出来うる限り誠実であるよう努めています。
陰口は言わない。人によって態度を変えない。金額で仕事を判断しない。
大切にしています。


どちらも技術的なことではなく、精神面の教えなんですよね。
技術的な面は続けていけばそれなりに得られるものが多いですが、こういった精神的なことは何かきっかけがないと気づけません。

私にとって中川先生は加賀象嵌だけでなく、人生においての師匠なのだと強く感じています。
現在は独立しておりますので、お会いする回数は減っておりますが、それでもお会いすれば色々と気にかけて頂き感謝の気持ちでいっぱいです。


by pa-pen | 2021-06-02 10:48 | 随想録 | Comments(0)

金沢の稀少伝統工芸である加賀象嵌のお話を中心に、その他趣味のお話もちょろちょろと…。


by pa-pen