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随想録その11「絵が下手な美大生もいる」

久々随想録です。

結構刺激的なタイトルですよね。

「美大生」と聞くと、皆さん絵が上手なのだと思いがちですが、実際そんなことないですよというお話です。

一言で美大と言っても、色々な科と専攻があります。

私が通っていた金沢美術工芸大学で言えば、当時は視覚デザイン科、製品デザイン科、環境デザイン科、工芸科、油絵科、日本画科、彫刻科、芸術学かとあり、さらにその中で工芸科は陶芸、染織、漆、鋳金、鍛金、彫金、彫刻は石彫、木彫、塑像とコースが分かれていました。


それぞれの科により受験内容が変わります。
私が受けた金沢美術工芸大学工芸科は鉛筆デッサンと水彩の想定デッサンでした。
鉛筆デッサンは静物を見ながら描き、想定デッサンでは出されたテーマを元に想像で描きます。
私の時は、確か白い発泡スチロールの立方体を鏡面や石膏など指定された材質に置き換えて、置いてあるブロッコリーなどの静物と組み合わせて自由に構成して描く…というようなものだったと思います。


受験内容に合わせて、受験の為のデッサンの勉強をしますので、限られた時間の場合、勉強しない分野も出てきます。
私の場合は静物の鉛筆デッサンと水彩デッサンしか必要ないと分かっておりましたので、木炭デッサンや石膏デッサンは勉強しませんでした。

で、大学に入るとどうなるかと言いますと…

油絵や日本画などの絵を描く科でない限り、絵を描く授業は基本的にありません。
絵の勉強は受験の時の勉強で基本終了となります。
もちろんデザイン画は提出しなければいけないので、毎日絵は描きますが、習うということはありません。
要するに「必要な画力は美大に入るまでに身につけておいてね。」というのが美大の基本スタンスです。

ですので私はいまだに木炭デッサンはできませんし、石膏デッサンも上手くありません。


では油絵や日本画専攻の人は毎日絵の勉強をしているのだから、さぞかし絵が上手いのだろう…とお思いでしょう??


確かにデッサンは上手いんです。毎日描いてますもん。

ところがですね。イラストが描けない人が沢山いるんです。

真面目な本物のような絵は描けるけれど、簡略化したイラストは全く描けない。

美大に入って驚いたことの一つかもしれません。

子供の頃から漫画が好きで、真似して描いたりしている人は上手にイラストを描くんですけど、そういう経験がない人も沢山いて、そういう人は全くと言っていいほどイラストが描けないんです。
意外ですよね。
私は子供の頃漫画家に憧れて、イラストばかり描いていたこともあり、模写よりイラストの方が得意です(苦笑)。


さらに模写でも得手不得手がありまして…
デザイン科や工芸科の人に比べて日本画や油絵の人はビール瓶やティッシュの箱など既製品のデッサンが上手くないんです。
逆に日本画や油絵の人に比べるとデザイン科や工芸科の人は人物や動植物のデッサンがうまくない場合が多い。
やはりこれも基礎になる受験勉強のデッサンが関係してくるのですが、その後の大学授業でもそれぞれ関わりが薄い分野となるので、比べると技量に違いが出てきます。

美大出身と聞くとさぞや絵が上手いのだろうと思い、気軽に

「似顔絵描いて〜」や「イラスト描いて〜」

などと言っていませんか???
言われて「ドキッッッッ」としている人が沢山いるんですよ(笑)。

お気をつけくださいませ。







by pa-pen | 2021-07-10 15:45 | 随想録 | Comments(0)

金沢の稀少伝統工芸である加賀象嵌のお話を中心に、その他趣味のお話もちょろちょろと…。


by pa-pen